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12週1日 つわりの終わらぬことを枕草子風に嘆く。

つわりというものは、

ゲリラ豪雨のようにやって来て、秋雨のように続く。

 

ある日突然台所に立てなくなり、

昨日まで食べていたものが、今日には食べることができない。

ぞわぞわと悪寒ともに襲いかかる吐き気は、妊婦にあらゆる家事を放棄させる。

願わくば、すぐにでも便器に頭を突っ込んで吐き出したいのだが、

日常を便器に支配されることを恐れ、

胃の中には何もないのだから吐く必要はないのだと

自分に言い聞かせようやく心を鎮める。

中には吐くことを止められず入院を余儀なくされるご婦人もあると聞く。

いと不憫なり。

 

よく晴れた昼間、ひとりベッドに横たわり、いまは何週かと数えながら、

思い出したようにエンヤを聴く。

ヒーリングミュージックに心を癒され、人知れず涙を流す。

これだけ苦しんでいるのだから、さぞ体重も減っただろうと測ってみれば

2キロしか落ちていないとは何事なのか。

 

匂いづわりもまた悪し。

食べ物、芳香剤、洗濯物、飼い猫の匂い、この世は匂いの地獄である。

中でも厄介なのは夫の体臭なり。

夫の出かけたるを見て、夫の寝具にファブリーズを撒くも、

今度はファブリーズの匂いにやられたり。

窓を開け、部屋の匂いを追い出していると、外からごま油の匂いがする。

運の悪いことに、本日のお隣の昼ご飯は餃子なり。

ついにはそもそも自分自身が臭いのだという妄執にとらわる。

この世に清浄な場所はないのだと追い詰められて泣いていると、

ある夜、しとしとと雨が降った。

開け放った窓辺に座り、しばし深呼吸を繰り返す。

雨の夜の空気の清浄さは、まるで極楽の如し。

 

ベッドに横になり天井を見上げると、

確かに臍の下あたり、今まさに活動中の濃い密度の部分あり。

それこそが、私の身体を混乱に陥れている正体なり。

辛いのなら母上はお好きなだけ寝ていればいい、とそれが言うものだから

今日も私は身を横たえながら、こんなたわいもないことを考えている。

 

 

(注:すみません。ふざけられるくらいには私は元気です)